Barn House
住宅 長野県北佐久郡御代田町
2020
真北に雄大な浅間山、北西に北アルプスの遠景を望むなだらかな北斜面中腹に建つ、東京からの移住者夫婦と愛犬のための住宅である。集落の屋根並みや神社の鎮守の森、南に平尾山の尾根にも囲まれるこの地の稀有な環境をいかすよう、建物配置や諸室および開口部のプランニングを検討した。
住宅の南北中央を貫くように配された納屋を思わせる筒状の空間と、2階床レベルに南北の高低差をもうけた断面の設計により、冬季の日射は北側の居住空間奥深くまで導かれ空間を満たしていく。建築内部の中央に立つ墨モルタル左官仕上げのRC壁は、階段と桁梁を支持する堅牢な構造体であり日射や薪ストーブの熱を蓄えるトロンブウォールでもある。この厚い壁は、居住空間を玄関土間や外部の喧騒から守ると同時に視線を2階の小屋組みへゆっくりと斜めに誘導する。結果、人はこの住宅が持つ懐かしい納屋のような、空間の垂直方向への伸びやかな拡がりを知覚するだろう。
快適で豊かな生活を支える空間意匠と基本的な温熱環境性能の両立と、この地での生活に寄り添う両者のバランスの実現を目指した。
標高約860mの寒冷地における居住性に配慮し、高断熱高気密のパッシブハウスの考え方を取り入れている。
屋根面には200ミリ厚のフェノールフォームによる外張り断熱、壁面にはグラスウールに加え付加断熱フェノールフォーム66ミリ厚、基礎断熱仕様としている。開口部には全面的に樹脂サッシ+トリプルガラスを採用し、断熱性能を確保。 さらに床下の空間を利用した24時間全熱交換型換気システムにより家全体の空気循環をコントロールするとともにアレルギー物質やウイルスも除去、環境や人にも優しい設計としている。
その他、ダイレクトゲインによる土間モルタルやRC壁への蓄熱、地域の卓越風を検討している。冬場の西風を防ぎつつ2階に南面するゲストルームの大開口に限っては熱を積極的に取り入れるように日射取得型の仕様とし、また夏場は南東の風を北方向に抜くような開口部の配置とし自然な風を通す。
パッシブハウスの経験豊富な施工会社との協力により建物形状やデザイン性だけではなく細かな仕様まで季節に応じた環境の変化を活かす工夫をしている。
DATA
担当 会田友朗 中村裕
担当 坂田涼太郎 鈴木一希
(パッシブハウスジャパン工務店会員)
担当 石巻司 堀田純一
長野総商(薪ストーブ工事)
1F 78.53m2 / 2F 25.83m2